池田町清見地区の小高い丘の上にある「いけだワイン城」。正式名を「池田町ブドウ・ブドウ酒研究所」といいます。ブドウの栽培とワインの醸造を手がける町営の施設で、「十勝ワイン」の産地です。しかし、その歴史は平坦なものではありませんでした。
十勝ワインの始まりは1963年6月。その3年前からブドウ栽培の調査をしていた池田町が、果実酒類の試験製造免許の交付を受けました。自治体によるワイン造りは、日本初だったといいます。先見の明のある先進的な町のプロジェクトでしたが、そこには切実な思いがありました。
1952年3月、十勝沖地震が発生。マグニチュード8.2、池田町は震度6の揺れを観測したそうです。翌年からは2年連続の冷害。農業を基幹産業とする池田町は大打撃を受けました。1956年には赤字再建団体に指定されてしまいます。その頃、38歳の若き町長が誕生。丸谷金保さん、十勝ワインの生みの親ともいえる人です。
当時の国産ワインといえば「赤玉ポートワイン」くらいでした。なぜ、丸谷さんはワイン造りを目指したのでしょうか。きっかけは、町内に自生していた山ブドウ。散策中に山ブドウを発見し、ブドウ栽培を思い立ったそうです。試行錯誤の末、ワイン造りに成功。本格的な製造が始まり、1974年に新しく建てられたワイン製造工場が「いけだワイン城」です。城のファサード壁面には、池田町を農業の町として復活させた山ブドウが植えられています。